無理ゲー地方創生

東京一極集中の果てに地方ではどんな未来が待ち受けているのか

地方創生が無理ゲーである理由をデータで見る

地方創生が無理ゲーだと思う理由をデータでみる

以下のテーブルはGDP下位20位を可視化したものです。(データが公開されている最新のもの2022年度の国内総生産からのデータです。)

ランク 都道府県 名目GDP(億円) 備考
47位 鳥取県 17,082 最小県。人口・経済とも最少規模
46位 島根県 20,105 山陰地方。高齢化進行中
45位 高知県 20,660 林業・観光中心
44位 徳島県 21,369 県内総生産は減少傾向
43位 佐賀県 23,044 九州最小規模
42位 福井県 24,013 製造業強いが人口が少ない
41位 山梨県 24,215 首都圏隣接だが市場規模は小
40位 和歌山県 25,678 近畿圏最下位
39位 山形県 25,879 第一次産業中心、地理的制約あり
38位 秋田県 26,023 高齢化率全国1位
37位 富山県 26,824 製造業は強いが小規模市場
36位 香川県 27,142 四国経済の一部、土地狭小
35位 岩手県 27,517 東北内でも比較的小規模
34位 福島県 29,318 被災後の回復中。広域だが分散
33位 大分県 29,662 製造業もあるが規模は中
32位 石川県 29,909 伝統産業と観光が柱
31位 青森県 30,115 農林水産中心、人口流出が課題
30位 宮崎県 30,406 農業比率が高い
29位 長崎県 31,551 離島含む構成で交通制約あり
28位 鹿児島県 31,924 農林水産+離島経済を含む

出典-内閣府

www.esri.cao.go.jp

 

ポイントになるのは、多くの県が人口100万人未満~150万人程度で構成されています。一次産業である農林水産業の比率が高い地域が多く、経済の多様性が低めで工業集積や大都市圏との接続が弱いことがGDP規模の制限要因です。

 

更に大都市圏へ働き手が流出するのを抑え、呼び戻し、他地域から働きに来て頂くという難題に加え元から地域へ根付いている人々の高齢化が進んでいるという二重苦三重苦に直面しているのです。

 

地方創生とはこのような下位ランクの地域をどうにかしなければならないということに他なりません。

 

次は三大都市圏のGDPを確認してみましょう。(三大都市圏とは首都圏・中京圏・近畿圏を含みます。)

都府県 名目GDP(兆円) 備考
東京都 約113兆円 圧倒的最大
大阪府 約41兆円 西日本の中枢
愛知県 約41兆円 トヨタなど製造業主力
神奈川県 約35兆円 東京への依存も強い
埼玉県 約24兆円 首都圏ベッドタウン兼工業地
千葉県 約21兆円 空港・製鉄など強みあり
兵庫県 約22兆円 港湾・工業・観光

これらを合計するとおよそ300兆円弱
つまり、日本の名目GDP総額(約570兆円/2023年時点)の約50〜55%に達します。

 

地方創生の本質は三大都市経済圏を地方経圏に逆流させるということ

そもそも人口が多い経済圏を見ていると、あることに気が付きます。それは大都市圏へ簡単にアクセス可能だということ。もちろん例外はありますが、東京隣接の都市圏はどうみてもアクセスには困りません。これらの都市圏が発展を遂げてきた理由がよくわかりますね。一言でいえば経済活動にも生活も便利な地域なんです。そして、地方創生って言い換えれば、これらの経済圏を破壊し逆流させようという試みでもあります。

 

「地方創生」における創生の意味とは、国が掲げる「地方創生」という言葉は、単なる地方活性化や振興とは異なり、人口減少・経済縮小の中で、地方に新しい価値・仕組み・産業を生み出していくことという強い意味合いがあります。

  • 「元に戻す」(復興・再生)ではなく、

  • 「これまでにない新しい地方の姿をつくる」

というのが提唱者曰く、未来志向の概念だそうです。しかし、働き手の人数は年々減っていて逆に働けなくなった高齢者の数はこれからもうしばらく増え続ける、それは三大都市圏だって同じ条件ですよね。

 

以下は地方創生における2025年度の予算です。

項目 金額 内容
政府全体予算案 6,822.8億円 前年度比+1,073.9億円増。※そのうち地方創生関連は大部分を占める 
地方創生2.0関連(地方創生の新展開等 約4,601.3億円 地方創生2.0施策の柱となる交付金や人材育成など一式
‣ 新しい地方経済・生活環境創生交付金 2,000億円 地方公共団体の創意工夫を支援する交付金
‣ 地方創生テレワーク推進事業 約85億円 デジタル活用で働き方改革・移住促進
‣ 企業人材等地域展開促進/プロ人材事業 約107億円 プロ人材の派遣・ネットワーク支援
‣ 地方創生カレッジ/RESAS活用支援 約140億円/107億円 人材育成・総合戦略支援

 

こんなカスみたいな予算で、未来志向の概念とか頭がイカレてるんですか?要するに補助金やるから適当にやっとけと言う、昔からある概念を言い換えただけに過ぎません。昭和の時代から何一つ変わっていないということがよくわかる試みですね。予算の振り分けを確認してみると、全く地方創生する気がないことがわかりましたw

 

本当は地方創生などやる気がないのでは?

最近出てきた構想でデジタル田園都市国家構想というものがあります。地方にも都市並みの利便性や機能をデジタルの力で届けることを目的としているそうです。

主な目的 説明
地方にデジタルインフラを整備 光ファイバー・5G・地域クラウドなど
働ける場所を増やす テレワーク、起業支援、地域副業
医療・教育の格差を埋める 遠隔医療・オンライン教育の整備
地方の魅力発信・観光促進 デジタル観光、ライブ配信、空間ARなど
行政手続きの簡素化 オンライン申請、自治体のDX支援

 

これって地方創生じゃなく、単なる環境改善ですよね?今までやろうとして全然やってないことばかりじゃないですか。後回しにしてきたものを地方創生プロジェクトに付け替えしただけのものです。テレワーク、起業支援、地域副業とかじゃなく、三大都市圏にある、儲かりそうな業種の企業を地方にいくつも誘致して、働く場所を増やすのが正解なのに、不便で都市圏へのアクセスが悪いからできないんですよね?

 

このようにちょっと考えただけでも地方創生が無理ゲーだという理由が山ほど見つかります。

 

以下は地方創生の成功事例として話題になっている例です。

1. 徳島県神山町

▶ ITベンチャーが集まる“奇跡の山間地”

  • 課題:過疎・高齢化・農村の担い手不足

  • 戦略:サテライトオフィス誘致/アートによる町づくり/地域外人材の循環

  • 成果

    • Sansan、プラットイーズなどIT企業が拠点開設

    • 人口が微増に転じた年も(UIターン多数)

    • 地域の空き家利活用が定着、住民と移住者が共生

  • ポイント:デジタルとアートを“地域の文脈”に組み合わせた点が画期的


 2. 島根県海士町(あまちょう)

▶「ないものはない」精神で自立を目指す離島

  • 課題:隠岐諸島の離島で、若年人口流出・高校廃校危機

  • 戦略:地域資源を活かした人材育成と起業支援/高校魅力化プロジェクト

  • 成果

    • Iターン・Uターンでの移住者が毎年増加

    • 離島高校に全国から進学希望者が集まる

    • 観光・水産・教育を軸にした新ビジネス創出

  • ポイント:若者に選ばれる「学びの場」としての地域ブランドを形成


 3. 長野県小布施町(おぶせまち)

▶ アートと公共空間の町づくりで観光×定住の両立

  • 課題:人口減少・産業の衰退(栗菓子と観光だけでは限界)

  • 戦略:住民参加型のまちづくり/景観と文化資源の活用

  • 成果

    • 年間100万人以上の観光客(人口の約50倍)

    • 公共施設を“泊まれる図書館”や“屋根のない美術館”に再構築

    • 若者の定住率・事業承継率が向上

  • ポイント:行政・住民・事業者の連携が抜群にうまく機能


 4. 岐阜県郡上市(ぐじょうし)

▶ 郡上踊りとローカルメディアで地域を魅せる

  • 課題:中山間地の集落消滅リスク

  • 戦略:伝統文化(郡上おどり)と移住支援の融合/地域放送や動画発信

  • 成果

    • 郡上おどりを核としたインバウンド観光再生

    • 空き家改修×移住支援で若者の起業が増加

    • YouTube等での地域発信に成功し認知拡大

  • ポイント:文化×メディアの地域経営が新しい


 5. 北海道下川町

▶ 人口減少の最中でも“持続可能”な町へ

  • 課題:寒冷地・高齢化・林業の衰退

  • 戦略:森林資源活用によるバイオマス発電/移住者に住宅+仕事+子育て支援

  • 成果

    • サステナブルタウンとして国際評価(SDGs先進地域)

    • 離職率・移住定着率が高水準

    • 地域通貨「森のポイント」などユニークな経済循環

  • ポイント:エネルギー・福祉・雇用の3本柱で人口減少下でも“持続”

成功事例に共通する特徴

特徴 説明
1. 地域固有の資源を“編集”して新価値を創出 → 伝統や自然、文化を再解釈
2. 外部人材を積極的に巻き込む体制 → 単なる移住促進ではなく「共創」モデル
3. 地域経済の循環を意識した設計 → 補助金依存からの脱却、自立・持続を目指す
4. 若者が「やってみたい」と思える場の創出 → 教育・起業・文化など感性に響く内容が重要

 

事例としてはあるものの、これだけ政府が提唱してきた地方創生プロジェクトという一大プロジェクトにしては成功事例が少なすぎやしませんかね?そして、これらを本当に成功事例として見ていいのでしょうか?

 

地方創生とは本来、「その土地の人たちが、自分たちの意思と力で、持続可能な地域社会を構築していくこと」であるべきです。

それには以下が必要です:

  • 農林水産業や地場産業の再構築(単価・販路・担い手問題の根本解決)

  • 出生数と教育機会の維持

  • 中長期的な財政・医療・介護の再設計

  • 高齢者の生活と若者の挑戦が両立する社会構造の再構築

 

ということで地方創生が無理ゲーであると思う理由を書いてみました。