無理ゲー地方創生

東京一極集中の果てに地方ではどんな未来が待ち受けているのか

「食」と「自然」だけでは地域は立ち行かない?──産業構造から考える地方創生の現実

日本各地で進む過疎化。空き家、閉店する商店街、消える公共交通。そして、それを食い止めようと導入されてきた「地域おこし協力隊」や地方創生交付金。しかし、実際には十分な成果を上げられず、撤退や制度見直しに至る自治体も少なくありません。

その背景には様々な要因がありますが、本稿では地域に残された産業構造――特に飲食業と農林水産業への依存が過度に高いことに注目し、そこに潜む問題と、それでも地方が未来を切り拓くための可能性について考察していきます。


地方に残された数少ない“仕事”

地方の就業構造を見ると、第三次産業(サービス業)と第一次産業(農林水産業)に偏っていることが顕著です。
工場誘致やハイテク産業の育成が難しい過疎地域では、観光客相手の飲食業や、地元資源を活かした農業・漁業が“最後に残る生業”になりやすいのです。

それ自体は決して悪いことではありません。むしろ、これらの仕事は地域とともにあり、土地の風土や文化を反映するローカルアイデンティティの核でもあります。

しかし、現実には以下のような課題を抱えています。


飲食業に頼り切る地方経済の“もろさ”

地方創生の現場で頻繁に見かけるのが、空き家を改装して始めるカフェやゲストハウス。「地域に人を呼びたい」「若者が集まる場を作りたい」という思いから、地域おこし協力隊や移住者によって多数のプロジェクトが立ち上がってきました。

しかし、飲食業は競争が激しく、以下のような現実があります。

  • 商圏が狭く、客数が限られている
     → 町に100人しかいなければ、何軒もの店は成立しない。

  • 観光に依存する脆弱性
     → コロナ禍で多くの観光地の飲食業が壊滅的な打撃を受けた。

  • 価格競争・低賃金の悪循環
     → 地元の物価に合わせると利益が出にくく、都市部並みの時給すら出せない。

要するに、地域経済のエンジンとして飲食業だけに期待するのは無理があるのです。


農林水産業の可能性と限界

一方、農業や漁業は地方の伝統的な基幹産業です。しかし、次のような構造的課題を抱えています。

  • 高齢化と後継者不足
     → 農業従事者の平均年齢は67歳を超えています。

  • 単価が安い/価格競争が激しい
     → 生産者の手取りは、都市の最低賃金を下回ることもしばしば。

  • 労働集約的で長時間労働
     → 特に小規模農家は、365日働いても利益が出にくい。

また、行政による「6次産業化支援(例:農産加工・直売所)」も進んではいるものの、それを継続できる経営スキルや販路の確保までは十分に支援されていないのが実情です。


なぜこうした産業に依存せざるを得ないのか?

その背景には、以下の構造的問題があります。

  1. 立地と交通インフラの不利
     → 工場や物流拠点には不向き。市場や人材から遠く、運搬費が嵩む。

  2. 若者が地元で働く選択肢が少ない
     → IT、クリエイティブ、金融といった高付加価値産業は存在しない。

  3. 行政主導の計画の多くが「短期成果志向」
     → 目に見える箱モノ整備やイベントに傾きがちで、産業育成は後回し。

つまり、「飲食や農林水産業に頼るしかない」のではなく、「それ以外を育てる余力や仕組みが地域になかった」と言った方が正確です。


飲食・一次産業を軸にした未来の構築は可能か?

とはいえ、これらの産業が無価値というわけではありません。むしろ、それらを「単体で完結させず、他産業とつなげる設計」が鍵を握ります。

1. 体験型観光との連携

例:農家民泊、魚さばき体験、地元野菜の料理教室
→ 「一次産業 × 観光」で高付加価値化が可能に。

2. DX(デジタル技術)による付加価値向上

例:オンライン直販、YouTubeによる農業配信、ブランド化戦略
→ 小規模でも「知ってもらう仕組み」があれば成り立つ。

3. サテライトワークと組み合わせる

例:週末農業×リモートワーク、移住希望者向け短期就農制度
→ 農業だけで食えなくても、補助収入を得る仕組みを作る。

こうした取り組みを支援する形で行政やNPO、大学が介在できれば、少しずつでも可能性は広がっていきます。


「誇れる産業」に育て直すという視点

地域の主産業が「食と自然」だけだからといって、それが弱点である必要はありません。むしろ問題は、「それらをどう見せ、どう育てるか」という戦略不在のまま、旧来通り続けていることです。

  • 「漁業」ではなく「海を学ぶ教育観光」

  • 「農業」ではなく「命を育てるプログラム」

  • 「飲食業」ではなく「地域の物語を届けるメディア」

こうした価値変換ができれば、これまでの“限界産業”が“希望の基盤”に変わる可能性は十分あります。


結論:「ないからできない」のではなく「あるものの意味を変える」

地方の創生が進まないのは、「飲食業と農林水産業しかない」からではありません。
本当の問題は、それらを「小さなまま」「内向きのまま」「変えようとしない」ことです。

地域の中にある「当たり前」を、外から見た「価値」に転換する視点。
そして、それを続けられる収益モデルと担い手の育成こそが、地方創生の本丸です。

 

結論へ付け加えると

それができないから地域創生は無理ゲーなんですよね・・・・