「東京に行けば稼げる」「地方は給料が低いから不利」。
そんな常識をあなたも一度は耳にしたことがあるかもしれません。
しかし、私たちの生活にとって重要なのは、「額面の収入」ではなく「可処分所得」=手元に残るお金であり、さらに時間のゆとりや物価の安さといった視点を含めた“実質的な豊かさ”です。
今回は、国土交通省による「都道府県別の経済的豊かさ(統計センター提供データより独自加工)」をもとに、本当に豊かな都道府県を探ります。
データの概要:可処分所得と基礎支出、通勤の機会費用
本調査では以下3つの指標に注目しています:
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A:可処分所得(収入から税金や社会保険料を引いた額)
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B:基礎支出(食費+住居費+光熱費)
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C:通勤の機会費用(通勤時間を時給換算した損失)
そして「A − B − C」の差額が多いほど、「お金が残り、時間にもゆとりがある=豊かである」と評価されます。
結論:豊かなのは地方!東京は下から数えて5番目
可処分所得から基礎支出と通勤の機会費用を差し引いた「実質的なゆとり金額」で見ると、最も豊かなのは三重県(239,996円)。
一方で、東京都は135,201円と全国42位にとどまりました。
つまり、東京は収入は多いが、生活コストと通勤の犠牲が大きすぎるため、手元に残る余裕が極端に少ないのです。
【ランキング】実質的に豊かな都道府県トップ10とその理由
順位 | 都道府県 | 実質ゆとり額(A-B-C) |
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1位 | 三重県 | 239,996円 |
2位 | 富山県 | 237,390円 |
3位 | 山形県 | 237,202円 |
4位 | 茨城県 | 230,945円 |
5位 | 福井県 | 229,523円 |
6位 | 徳島県 | 224,588円 |
7位 | 新潟県 | 222,676円 |
8位 | 鳥取県 | 222,477円 |
9位 | 岐阜県 | 222,468円 |
10位 | 岡山県 | 218,193円 |
それぞれの県が上位にいる理由を、背景とともに見ていきましょう。
1位:三重県(239,996円)
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製造業の雇用が安定しており、平均所得が比較的高い。
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家賃・物価が全国平均より安く、可処分所得が多く残る。
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通勤時間も比較的短く、時間のゆとりも得やすい。
2位:富山県(237,390円)
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持ち家率が非常に高く、家賃支出が少ない。
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産業構造が安定し、医薬品や機械工業の高収入職が多い。
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通勤時間も短く、生活効率が高い。
3位:山形県(237,202円)
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地価が安く、住居関連支出が極めて低い。
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自給自足的な暮らしが根付いており、食費も抑えやすい。
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雪国だが、県内移動中心で通勤負担が少ない。
4位:茨城県(230,945円)
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首都圏に近いが地価が低く、住宅費の圧迫が少ない。
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工業団地・研究都市など高収入産業も多く立地。
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通勤時間も関東圏の中では短め。
5位:福井県(229,523円)
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家族経営や共働き世帯が多く、収入源が安定。
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教育水準が高く、無駄な支出を抑える県民性。
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基礎支出の低さが高評価。
6位:徳島県(224,588円)
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地方の中でも住居費が最安クラス。
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高齢化が進む一方で、固定費が少なく生活がシンプル。
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可処分所得の割に支出が少なく、残る金額が大きい。
7位:新潟県(222,676円)
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農業・製造業のバランスが良く、一定の収入が確保される。
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雪国だが、冬季補助や持ち家文化により支出が低い。
8位:鳥取県(222,477円)
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全国で人口最少だが、住居費と生活費が非常に安い。
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通勤距離も短く、生活にかかる“時間コスト”がほぼゼロ。
9位:岐阜県(222,468円)
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名古屋圏に隣接しながら、生活コストは中部でもトップクラスに低い。
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製造業が強く、収入と支出のバランスが良い。
10位:岡山県(218,193円)
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中四国の交通要所でありながら物価は安め。
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子育て支援や医療体制が整っており、支出を抑えやすい。
一方、東京はなぜ「豊かでない」のか?
東京都は、平均年収が高くても、基礎支出と通勤時間コストが全国ワーストレベルです。
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家賃が全国平均の2倍近く
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外食・教育・交通費も高水準
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通勤時間も片道平均50〜60分、時間的損失が大きい
結果的に、「お金を稼いでもすぐ消える」「時間も余裕もない」という、見かけ倒しの豊かさとなってしまうのです。
結論:地方は“稼ぎにくい”が、“豊かに暮らせる”
この調査が示すのは、「年収=豊かさ」ではないという明確な事実です。
東京は仕事は多いが支出とストレスも大きく、“経済的に豊かな地域”とは言えないのです。
一方、地方は確かに賃金は低いかもしれませんが、
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支出が少ない
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通勤時間が短い
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精神的ゆとりがある
といった理由で、**“実質的に豊かに暮らせる”**可能性が高いのです。
あなたは「どこで」より「どう暮らしたいか」
東京で目いっぱい働いてお金も時間もすり減らすより、地方で穏やかに、手元にしっかりお金を残しながら暮らす選択。
今後は「どこで働くか」よりも、「どう生きたいか」が問われる時代です。
あなたが望む“豊かさ”は、案外あなたの地元や、静かな地方都市にあるのかもしれません。
■ 主な情報源(一次統計)
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都道府県別の経済的豊かさ(PDF)
出典:国土交通省 国土政策局による独自加工統計
元データ:「全国消費実態調査(平成26年 総務省)」+「毎月勤労統計」「住宅土地統計調査」
内容:
- A: 可処分所得
- B: 基礎支出(食費+家賃等+光熱費)
- C: 通勤の機会費用(時間×時給換算)
→ 評価指標:A − B − C
■ 都道府県別の個別要素(家賃、雇用、産業、持ち家率など)
以下は主に政府統計(e-Stat)や各自治体の統計データ・地域振興計画、および**公的調査レポート(以下参照)**をもとに要約・編集しています。
要素 | 主な出典・典拠 |
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家賃・物価水準 | 総務省「全国消費実態調査」「住宅土地統計調査」 |
持ち家率 | 国勢調査(総務省) |
通勤時間・距離 | 国土交通省「都市圏の通勤通学実態調査」、住宅土地統計など |
地場産業・収入構造 | 経済産業省「地域経済分析システム(RESAS)」、中小企業白書等 |
可処分所得 | 本PDFに記載の「中央世帯のA-B-C」指標 |
高齢化率 | 総務省「人口推計」、各県の地域振興戦略 |
教育・医療体制 | 各都道府県の総合計画・子育て支援政策資料 |
補足:
特定の都道府県の説明(例:三重=製造業が強い、富山=持ち家率が高い、など)は、以下のような定評ある統計・報告を根拠にしています:
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✔️ 三重県:製造業集中(シャープ・トヨタ・三菱)
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RESAS(地域経済分析システム)
地域ごとの産業構造・製造業出荷額などを可視化可能。
→ 検索方法:「産業構造」→三重県を選択します -
三重県「経済センサス」データ ← PDF
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例:製造業従業者数が多いことを示す統計あり
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富山県:持ち家率全国トップクラス
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富山県|令和5年住宅・土地統計調査(基本集計)← PDF
持ち家率:74.9%(全国平均60.9%) -
総務省住宅・土地統計調査(2008年版)
富山県含む各都道府県の持ち家率が掲載
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山形県:住居費が低く、野菜自給率・共助型暮らしが多い(農水省・地域づくり白書)
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茨城県:つくば研究学園都市、鹿島臨海工業地帯(国交省・立地企業情報)
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福井県:共働き率・貯蓄率全国上位(厚労省・家計調査)
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鳥取県:通勤時間・家賃最短最安クラス(国交省・国勢調査)