無理ゲー地方創生

東京一極集中の果てに地方ではどんな未来が待ち受けているのか

地方移住における不動産は買わずに借りること

田舎に移住を検討している人は、住むところを決めなければ移住もできない。そして移住するには買う、借りるというパターンがあると思いますが、筆者は迷わず借りる事をオススメします。この記事を読んだ地方移住希望者は、勢いでカスみたいな不動産を購入したという事にないようにしてもらいたい。

 

今日はその理由を詳しく書いていきます。

 

田舎暮らしが気に入らなかったらどうするの?

田舎暮らしが性に合わない、やっぱり東京に戻りたいと思う人は必ず出てくる。こういう時に土地付き古民家などを購入した場合、手放そうにも売れない古民家を所有しなければならなくなる。つまり、維持費や固定資産税を支払い続けなければならないという悪循環に陥ることになるのです。賃貸に出して家賃を得ればいいじゃないかと思う人もいるかもしれないがそう甘くないのが現実で、田舎暮らしを満喫できるようなド田舎は、人口が減少している上に不便なのでその手の物件は空き家バンクに沢山登録されているのが現状です。

 

要らない不動産は捨てちゃえばいいじゃない。→いいえ、できません。

民法239条2項にはこう書いてあります。

・所有者のない不動産は国庫に帰属する

それじゃ要らない不動産を捨ててしまおう!捨てれば国の物だよね?

 

いいえ違います。しかし、この不動産を捨ててはいけないというのは民法に記述がありませんが不動産登記先例の質疑応答で法務省がこのように回答しております。

 

所有者

Q.神社の所有地の一部が崖になっており、今にも崩れそうになっている。これを工事で復旧する場合多額の工事費がかかるので所有者が払えない。しかし放置しておけば近隣住民に危険が及ぶので所有権を放棄して国に引き取ってもらえないだろうか?

 

法務省

A.不動産の所有権は放棄できない (昭和41年8月27日付民事甲第1953号)

 

というわけで、要らない本や家具を捨てるのとは性質が違って不動産における所有権というものは放棄できないのが現状なのです。ちなみに一つの土地を共有で持っている場合、共有者の一人は共有持ち分を放棄する事ができます。要するにババ抜きと一緒。

 

要らない不動産はあげちゃえば?市町村に寄付すればいいじゃん?

その判断は間違ってはいません。でも、よく考えてみましょう。その土地貰ってくれるだろうか?昔の人口が多いときならまだしも今や完全にお荷物な土地ですからだれも貰ってくれないですね。

 

そして不動産を譲渡するということは、不動産の評価額にもよりますが貰った側は贈与税が発生します。そして、登記に費用がかかります。司法書士に報酬も払わないといけませんね。ここまでして貰ってくれるかというと簡単には貰ってくれないのです。その不動産に価値があるのであれば話は別ですが、そのような不動産は問題なく売れますからね。

 

では、市町村に寄付するのはどうでしょうか。残念ながら貰ってくれないのが現実です。税金を払うのが嫌だから物納で・・なんて無理な話です。市町村の収入源は固定資産税です。例えわずかでも一般人が持ってた方がいいし市町村も必要のない土地はもらってくれません。このようなカスみたいな不動産を一度手に入れると手放すのに大変な労力がかかるのです。

売れない不動産(建物)を所有すると何が問題なのか?

必要のない不動産を所有すると様々な問題が出てきます。土地付き古民家を移住先で購入したのはいいが、人付き合いにうまくいかず東京に帰りたい・・・こんなケースの場合、その古民家を売るか貸すかしなければなりません。売れなかったり借り手がいなければそのまま放置することになります。放置し続けるとどうなるか・・・

・特定空き家に指定されるかもしれない

特定空き家とは

市町村から指導・勧告・命令を受けることになる空き家が「特定空き家」です。空き家対策特別措置法では、次のどれかに該当する空き家を「特定空家」と定義しています

  1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

このように特定空き家に指定されるかもしれません。そして、特定空き家に指定されると固定資産税の住宅用地特例を利用できなくなり、6分の1まで減免されていた固定資産税が元に戻ることによって最大で住宅が建っていた時の6倍の固定資産税を支払う羽目になるのです。

 

要するに、倒壊しないようにお金をかけて不動産を管理するか、更地にして所有するかしろということですね。解体に数百万円かけ、そうすると更地になるので固定資産税の住宅用地特例の利用もできないので最大で6倍の固定資産税を支払うかどちらかなのです。嫌なら意地でも売るか譲渡したいところですね。

売れない不動産(土地)を所有すると何が問題なの?

更地にすると固定資産税の住宅用地特例が利用できない、延々と固定資産税を支払う必要があるし樹木の伐採、その他お金や労力、時間をかけて維持管理をする必要があります。そのまま放置して誰かがうっかり怪我でもしたら自分は何もしてないのに管理者責任を問われる場合もあります。そして不動産の所有権は放棄できません。売るか譲渡するしかないのです。建物は最悪取り壊せばいいのでまだ救われるのですが土地は文字通り土着物ですからどうしようもありません。

 

売れない不動産を手に入れる前に考えてほしい

カスみたいな不動産を買う前にこういう情報にたどり着いた人は非常に運がいいです。地方に移住したい人はそもそも買うという選択肢を除外して借りる方を選んだほうがいいのです。失敗したら引き払って帰ればいいだけだからね。それでもどうしても買いたいという人はできるだけ処分可能な不動産を選んでいただきたい。そして、じっくりと調べてから色々な可能性を考えながら購入してほしい。

 

例えば、土地付き住宅を購入して手放せなかった場合、最終的に所有者が亡くなることによってやっと手放せる手段である、「相続」が発生します。これは、相続権がある人が相続放棄することによって可能になります。ただ、相続放棄はいらないものだけ放棄することができません。よって放棄すると全てを放棄することになるので金銭などの預貯金が他に合った場合は生前贈与するという準備が必要となるのです。ただし、これは別の相続人がいれば話が変わってきますし、ややこしい問題になるのです。

 

自分が亡くなった後の事は知ったことではないかもしれないですが、残された人間はカスみたいな不動産を残されてはたまったものではないです。田舎にある土地、山、畑、家屋、こういったものは使えるものであれば農業をしたり、山の恵みを得たり、相性が良ければ住んだりとありがたいものですが使い物にならなければ金や労力、時間を無駄にしてゴミを延々維持してるのと変わらないのです。

 

日本の住宅は資産などではなく、価値はないと思ったほうがいい

日本の住宅市場(特に田舎)では、ある程度年数が経過している住宅には基本的に価値はありません。だから中古住宅市場が円滑に進まないし新築ばかりが建ってる状況なのです。消費者も中古住宅を基本的には信用していません。だから新築にバカみたいな値が付くし高い割にはすぐ価値が落ちるという負のスパイラルに陥ってるのです。

 

古民家は、法的に言うと既存不適格住宅と言って建築時点の法令では合法であったがその後の法改正などで不適格な部分が生じた建築物のことです。ただ、売買は自由であるため業者は「掘り出し物」「歴史的価値がある」などあの手この手で売ろうとします。しかし、一般的に販売されている古民家に歴史的価値のあるものは存在しないと言ってもいいでしょう。そんなものがあれば重要文化財等に指定されて保存されるのです。よって古民家=取り壊しが最も正しい手段であると私は思います。

 

それでもどうしても古民家を再生したいのであれば、お金をかけて工事するしかないでしょう。大きな地震に耐えることができるように耐震性能を確保する必要もあるでしょう。それでも古民家は大きな地震に耐えることは難しいかもしれません。古民家リノベーションは面白いかもしれないですがこういうネガティブな側面も知っておかないと後々大変なことになります。

 

まずは賃貸からスタートしてみること

それでも田舎で古民家を購入したい・・と言う人は2年くらいかけてじっくりと住んでみること。半年とかじゃ足りません。年間通して住んでみてどこがダメか、どうやったら快適になるか、土地との相性はどうか、町の人との付き合いは、家屋にお金を払うだけの価値がありそうか、そういう期間が必要なのです。何故その土地から若者が出て行っているのかという背景にも注目する必要があります。




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